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オン・ザ・ロック [     ・仲良し3家族]

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トモヒコへ

かず兄は俺の背を越したよ。

俺も背は高い方だけどお前は190近くあったからな。
かず兄は成長するに連れてお前になっていくぞ。
悪ガキだったお前と違って真面目な好青年だがな。
笑うとお前そっくりで驚かされるよ。

たっちゃんはミナミさん似だな。
性格はお前だぞ。
凝りもせずいたずらばかりしてる。
憎めないのもお前と同じ。

お前の忘れ形見だから俺が守ってやるって思っていたんだが
俺がしてやれることなんてほとんどなくてな
かず兄もたっちゃんも立派に育っているよ。

かず兄と2人でよく釣りに行くんだが
ほら男の悩みは男の俺が聞くのがいいと思ってさ。

でもな 
かず兄としゃべっていると
なんだかお前と話している気がして困る。
いつのまにか「俺はさ」っていい歳こいて「私」から「俺」になってるし
俺が一方的にお前の昔話をしてることが多いよ。
昔話ったってほとんどが学生時代の頃の話だが。
お前が早く逝き過ぎたせいだぞ。

愚だ愚だ話してることに気づいて俺が謝ると
また謝ってますねってかず兄は笑うんだが
お前に笑われてる気がするよ。

「たくにも話してやって下さい。たくも俺も父親のことを知りたいですから。」

俺何中学生に気を使わせてるんだろ。

第一な 学生時代のお前の話は子どもの教育上良くない。
悪いことばっかしてただろ。
俺も人のこと言えないけどお前には負けるよ。

大学出た後、俺は田舎に戻ってお前は都会に残った。
「ミナミが田舎に憧れてるから退職したらそっちに帰るよ。
俺らの親父達みたいに釣りでもして一緒に歳とろうぜ。」
って盆暮正月にこっち来る度にお前言ってたよな。

なのに ミナミさんもお前もあっけなく逝ってさ。
かず兄4歳、たっちゃん2歳。

昨日のことのように覚えてるってやつ。
盆にお前だけが1日遅れで来るってことで
ミナミさんが車で向えに行った帰り
時速80キロ以上出していた車と正面衝突。

ここは田舎だから「大事件」はあっという間に伝わったよ。
まさかミナミさんとお前だとは思わなかった。

相手も即死。
18歳の青年はどうやら飲酒をしていたらしかった。

彼の両親がお前の父さんと母さんに謝罪に来てたよ。
お前の父さんも母さんも怒りで煮えたぎっていたけど
息子を亡くしたばかりの両親に強いことは言えなかったみたいでさ。

かず兄とたっちゃんはそのまま都会の家に戻らないまま
お前の父さんと母さんが育てることになった。

俺の見たところかず兄もたっちゃんも
お父さんとお母さんを恋しがるような素振りは見せなかった。

だがな 後からお前の父さんから聞いたんだが
2人がお父さんとお母さんのことを口にすると
お前の母さんが声を立てずに泣いたんだそうだ。
2人はお前の母さんが泣き止むまで側から離れなかったそうだよ。

ああそうそう 
かず兄が小学校に上がるとき
変わった一家が越してきた。

お前の家の近くに空家があったろ。
俺らが小学生の頃 
狢の女妖怪が出るって騒いでたあの家だよ。

あそこどうやら借家だったらしくてさ
今そこに住んでるよ。

母親と娘2人。
娘達はかず兄とたっちゃんとそれぞれ同じ歳でさ
母親はお前にだけ言うが狢の女妖怪かもしれん。

母親は週に一度夜勤勤務があってな
娘達はその日になるとお前の家に泊まってる。

変わった一家だがカナコと俺は来てくれたことを感謝してるんだ。
このことは別の機会に話すよ。

まあ とにかく賑やかにしているから
たまにはミナミさんと2人で覗きに来いよな。

                        カズユキより

 

 

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