たそがれ [覧 ・パパとママ]
となりのこを屋上に案内したの。
入院病棟の扉の鍵が壊れてて そこからこっそり出入りできるの。
朝の自由時間とか夕方の自由時間によく行くわ。
六人部屋から抜けだして
ひとりになって 風に吹かれるの。
風は優しかったり 冷たかったりするけど あたしはみんな好き。
時和正午の「サニー」に出てくる西風さんや北風さんが通り過ぎて行く気がするの。
そして 今サニーはどこにいるんだろう?って考えるわ。
「サニー」はあたしのママが大好きなお話であたしが小さいときからよくサニーの話をするの。
あぁんまり好きすぎて ママったら女の子が生まれたら名前を「サニー」にするつもりだったらしいの。
お兄ちゃんは男の子だから 女の子のあたしが「サニー」になるはずだったんだけど
パパに「サニーはみんなを幸せにしたら どこかに行ってしまうからダメだよ。」って言われて
あたしは今のあたしの名前になったの。
今の名前も好きだけど「サニー」でもよかったナァ。
夕方はよく高等部の人たち つまり高校生の長期入院の子ね が
屋上の策にもたれかかってたり町を見下ろしたりしてる。
夕焼けが特別きれいなところよ。
あたしにしてみれば高等部の人たちは大人みたいにみえるナ。
小中高ってくりあがってる人もいるんだけど友だちどおしでバンドをくんでたりしてて
文化祭とかで大活躍。スゥゴク かっこいい!!
そういえば 前からあたしのこと知ってる高等部の人たちも
あたしのこと「こだまちゃん」って呼ぶようになっちゃった。
あとそれから看護士さんたちもよ。
あたしも「こだまちゃん」をナカナカ気に入ってるわ。
となりのこも風に吹かれるのが好き。
「夕方になったら ふたりでたそがれちゃおっか。」って。
あたしも 夕日をあびて町を見下ろせば大人っぽく見えるかもしれないナ。
2008-04-30 16:28