半跏思惟像 [主 ・となりのこ(ルビー)]
弥勒
阿修羅
となりのこのお母さんがお見舞いに来たの。
となりのこはあたしみたいに「ママ」って呼ばない。お母さんって呼ぶわ。
「パパママってチャイ語じゃん。」ってとなりのこは言う。
チャイ語っていうのは中国語のこと。
いつもはお見舞いにくるととなりのこと「外出」しちゃうんだけど
今日は珍しくずっと病院にいたの。
雨だったからかしら?
でね
となりのこのお母さんはとなりのこそっちのけでずっとあたしにかまってくれた。
「まあ なんてかわいいんでしょう!」って抱っこっしてくれたり髪の毛とかしてくれたり。
となりのこは後で「私の母親ネジ(頭のネジという意味)はずれてて。今日ほんとにごめんな。」ってスゥゴク謝ってた。
ちょっとだけびっくりしたけどとなりのこのお母さんの話はスゥゴク面白かったナ。
なんの話をしてくれたかっていうと仏像の話。
となりのこのお母さんは油絵を描くの。
で
となりのこには「弥勒」を
となりのこの妹さんには「阿修羅」を
油絵で描いてプレゼント。
なんでもね
となりのこは弥勒にとなりのこの妹さんは阿修羅に似ているからだって。
とうかしら?
確かにとなりのこは面長でとなりのこの妹さんは丸顔だけど。
他はあんまり似てない気もする。
ありゃ
「似てるわけない。」ってとなりのこが言ってる。
今日はとなりのこにその油絵を持ってきたから仏像の話をしてくれたってわけ。
弥勒と阿修羅の物語とか作られた時代の背景とか。
「半跏思惟像*」っていう言葉も覚えたし字も書けるようになった。
弥勒と阿修羅だけじゃなくてあたしの知らないたくさんの仏像についてお話してくれた。
有名な運慶と快慶の仏像の作り方とかその迫力のすごさとかも。
よくわからないところもあったけど 「なぁるほど」 って思ったことがいっぱいあってスゥゴク楽しかった。
となりのこはちょっと困った顔してた。
ありゃ
「苦笑いだ。あれは。」ってとなりのこが言ってる。
むかいのこはとなりのこと一緒にとなりのこのベッドに座ってとなりのこのお母さんの話を聞いてた。
「どう? 素晴らしいでしょう?」ってむかいのこに話をふる度に
となりのこは「どうって困ってるに決まってんじゃん。」って代わりに答えて
「あなたには聞いてないの。」って言い返されてた。
むかいのこはその度に笑いをこらえてた。
となりのこのお母さんがお見舞いに来ると看護士さん達はいつも「すてきなお母さんね。」ってとなりのこに言う。
となりのこはそう言われるのを「ルビー」って呼ばれることと同じくらい嫌がってる。
すてきなお母さんだと思うんだけど
となりのこはちょっと違う風に思ってる。
となりのこのお母さんは自分が見たいものしか見ようとしないんだってとなりのこは言ってる。
「自分だけのマイワールドに生息しちゃってるから私ら(となりのこととなりのこの妹)は少し迷惑なんだよね。」って。
そうなんだ。
でも 物知りだしお話も楽しい。
それにずうっと笑顔で話しかけてくれたのがスゥゴク嬉しかった。
またお見舞いの日に雨が降るといいのにナ。
あと となりのこの妹さんも一緒だといいのにって思う。
*半跏思惟像・・・仏像彫刻で、思索している弥勒菩薩の姿に付けた名。
となりのこの妹ととなりのこ
むかいのことむかいのこ
こだまちゃんとニヒル君
追記
母(となりのこの母親)は油絵の題材を決めると、似顔絵を頼まれたとき以外は、そればかり描き続けます。この当時は仏像ばかり描いていました。その後、竜→馬→河童→不死鳥と遍歴を経て現在は狢を描くことに没頭しているようです。
母の絵はどれも皆微妙にアンバランスで見ている者に違和感を感じさせます。それが感性と呼ばれるものなのかもしれませんが私(となりのこの妹)には少し不気味に感じられます。
色鉛筆で描かれた狢の下描きが机に出しっぱなしにされていたのでこっそり掲載します。母がインターネットを見ることはまずないのですが黙って載せたことにちょっとドキドキしています。
母の描く狢(デッサン)
母の描く狢(デッサンのコピーで試し塗り)
☆いらしてくださった皆様へ☆
ご訪問ありがとうございます。
お忙しい方もいらっしゃると思いますのでniceやコメントは省いて下さって構いません。
一人でも多くの人に読んでいただきたいと思っています。
これからも気軽に目を通していただけたら幸いです。
2008-05-25 13:10